■仲直り、したいな
廊下の窓辺で一人、ハァーっと脱力するような盛大なの溜め息も、これで何度目のことか… 一々数えているのも虚しい。 同じような後悔を幾度繰り返しても、また同じように巡ってくる。 恋人同士のたわいもない喧嘩────── 他人に言わせればそれまでのこと。 そして、事実、それ以上でもそれ以下でもない。 喧嘩の原因なんてものも元を辿れば些細な言い争いが始まりで、その切欠なんてもっとロクでもないことが殆どだ。 例に漏れずと若松もそんなこんなでこじれている最中だった。 当人同士が解決する他ない上に、こんなケンカ状態は今に始まった事ではない二人を知る友人たちは揃って「また始まった」と思うだけだ。 「大体、怒鳴れば言うこと聞くと思ってんのよ?あの単細胞…」 信じらんないとひとしきり友達に愚痴ってはみたものの、あとに残るのはいつもの気まずさ。 一人になれば若松の事ばかり思い浮かんでは消えていくのを繰り返す。 そういう時は決まって笑っている顔ばかりが出てくる。 元から気の利く様な正確じゃないけど、不器用なりの優しさをは知っている。 だから、一緒にいる。 どちらから告白したりするような始まりじゃなかった。 本当に、『気の合う友達』からの延長線上の様な付き合いだ。 若松に直接聞いたことはないけれど、少なくともの中ではそういう始まり。 『ちゃんとした彼氏彼女』の定義もよくは分からないけど、好きだから一緒にいる。 がさつで、不器用で、すぐ怒鳴るし、空回るし、人の話は聞かないし… それでも… 結局、いつも許せてしまうくらいには ──────愛しい……────── 「なんでかなぁ~……」 何度考えても分からない。 バツの悪そうな顔した若松を見ると、あんなにデカい図体してるクセにいじらしくて可愛いとさえ思えてしまうのだから仕方ない。 思い浮かぶと自然と笑いが込み上げてきた。 どんな時でもを笑顔にさせるのはやっぱり若松の存在で……────── 「…こーすけ……」 ふと、小さく唇の先で彼の名前を呟やけば、途端に会いたくなる。 そして、は最後の溜息を吐くと、颯爽と踵を返した。 向かう先にあるだろう、彼のバツの悪そうな顔を目指して。 ■戻る |