■ Love Parrfum
暖かな日差しと心地よい風の吹く草原に寝転び、ヴィムはもう間もなく訪れるであろうの姿を想いながらウトウトとまどろんでいた。 ベスマールには美しい景色がたくさんある。その全てをに見せたいと暇を見つけては誘い出していた。 時間なんていくらあっても足りないくらいだ。 想うだけで焦がれ、会えば更に愛しさが増していく。 ヴィムは気付けばいつだって彼女の姿を、匂いを探していた。 「早く会いたいな…」 考えれば考えるほどうずいていく。そして、コロコロと寝返りを繰り返していると突然ヴィムの耳がピクリと反応した。 「──────来たっ!」 間違えるはずのないの香りが風によって運ばれてきた。 まだヴィムの元へ辿り着くには少し距離がありそうだが、確実に近付いてくる気配に尻尾もソワソワと揺れた。 迎えに行こうかとも考えたが、今日は待つことに決めた。 仰向けに転がり、眩しい陽の光を瞼を閉じて遮ると、ヴィムの嗅覚は集中してより鮮明にの動きを捕え始める。 駆け寄ってくる足音も聞こえ、堪えきれずに耳もピクピクと音を追い掛けた。 あと10m…… 5m…3m…… …もうちょいってところかな………… 「ヴィム、お待たせ!」 も広い草原に寝転ぶヴィムの姿を見つけていて、まっすぐに彼に駆け寄り声を掛けた。 けれど、ヴィムは無反応だった。いつもはすぐに気付いて笑顔でを迎えてくれる彼が今は動く気配がない。 「…ヴィム?」 寝ているのかも?と、はそっと近付いた。 ヴィムのふわふわした髪も耳も心地良さそうに風に揺らめく。 閉じたままの瞳は長い睫毛で覆われていて、彼の造形の美しさを際立たせていた。 「ヴィム、こんなところで寝てたら風邪ひくよ?」 一歩、また一歩とは寝ているヴィムに近付くと、彼のすぐ傍に膝を付いて座り込んだ。 いつも優しくて、その優しさから痛みも全部受け入れてしまう。そんな彼だからこそは傍に居たいと思った。 守られるばかりではなく、も彼の抱える痛みも一緒に分かち合いたい。そして、できることならヴィムに安らぎを与えてあげられるような存在になりたい、と。 安らかな寝顔にの手は自然と伸びていた。 柔らかな髪の感触を遊ぶようにそっと撫でながら楽しむと、大きな彼の耳がピクリと跳ねた。 起きたかな?と、様子を見るが、まだ目覚める気配がないと分かると、の手はヴィムの頬へと宛がった。 暖かな温もりが伝わってくると、それだけでの顔は優しく綻んだ。 すると突然の手が捕まれた。思わず目を見開くと、目の前のヴィムも金色の瞳を覗かせながら悪戯な笑顔を向けていた。 「……っ、もう~限界っ!!ってか、お前起こす気ないだろ?」 「ヴィム!いつから……あ、もしかしてずっと起きてたの?」 「さてね?」 「もぅ…」 「悪い。が俺に近付いてくるのを感じてるのが好きなんだ。まっすぐ俺に会いに来てくれるって思うだけで嬉しい。お前の匂いも声も全部…好きだ」 「ヴィム…」 握りられた手が熱を帯びていくのが分かった。ただ、それがどちらの熱なのかは定かではない。 一気に頬を赤く染めたは勿論、ヴィムもまた早鐘を打っていた。 ヴィムは手の中にある細い指先を口許に運ぶと軽く口付けてはペロリと舐めた。 「きゃっ!」 「ははっ、驚いた顔も好きだぞ」 「ヴィムってば、もう…」 「さっきまでは散々俺のこと触ってただろう?だから…」 弾みをつけて身体を起こしたヴィムはそのままの手を引き寄せると、自分の胸の中に閉じ込めた。 「…今度は俺の番。折角二人でいるんだ。もっとお前を感じていたい。それとも、俺に触れられるのは嫌か?」 「ずるいよ。そんな訊き方…嫌なわけないでしょう」 「そっか。ならよかった」 満面の笑みを浮かべたヴィムはの首筋に顔を埋めると鼻腔をくすぐる大好きな彼女の香りに幸せが満ちていくのを感じた。 そして、目的地に赴くまでの暫しの間、愛を囁き続けた。 ■戻る |