第四部隊【壱】宿縁の地へ
自室へ呼んだ6人はそれぞれ身支度を済ませ、その傍らには自身の本体とも言える刀を帯刀していた。 表情を硬くする者もいれば、朗らかに微笑む者もいて、各々がこれから向かう戦場への思いを馳せていた。 出陣を命じるも少なからずの緊張があった。 この日、出陣を言い渡したのは第四部隊の面々だ。 隊長の山姥切国広、長曾根虎徹、和泉守兼定、加州清光、大和守安定、そして堀川国広の6名からなる部隊で、行先は新選組とゆかりの深い池田屋だった。 山姥切を除く皆が新選組と 多かれ少なかれ、それぞれの動揺を誘うには充分なこの任務。 それでも、は本丸を預かる審神者として彼を派遣しなければならなかった。 「それでは皆さん、くれぐれも気を付けてください。よろしくお願いします。」 あくまでも気丈に振る舞い、がゆっくりと頭を下げると、6人も黙って頭を下げた。 そうして再び上げられた新選組の刀剣男子達の瞳には、普段見知った彼らとは明らかに違う、殺気にも似たぎらついたものが見えた。 ─── 壬生狼 ─── 新選組という一組織の面々が京都の街で活躍していた時代、皮肉の様な字名で呼ばれていたのは有名だ。 が対峙しているその瞳はどれも得物を狩りに向かう獣のそれと言っても過言ではない。 背筋に詰めたい物を感じながらも、一人、また一人と立ち上がり、部屋を後にしていった。 そして、最後に部屋を出ようとする山姥切とどちらともなく視線を交わした。 「…いってらっしゃい」 笑顔で送り出すつもりが、上手く笑えなかった。 ほんの少し取り繕うことすらできない自分が情けなくては視線を落としてしまった。 ハァ…とひとつ、嘆息する山姥切に、呆れられてしまったかといよいよ寂しくなった時、ポンと暖かい手がの頭を撫でた。 「厄介なのは承知の上で、俺は隊長を引き受けた。引き受けた以上はやれるだけの事はする。少なくともあんたを悲しませるようなことはさせないから安心しろ」 「うん…ありがとう」 「…帰って来た時は笑顔であいつらを迎えてやってくれ」 「そうだよね…うん。山姥切も無事に帰ってきてね?」 あぁ、と頷いた山姥切は口角に微かな笑みを浮かべ、フードの奥で見えにくい翡翠色の瞳も穏やかな表情だった。 彼にしては珍しいと思わず見入っていると、それに気付いた山姥切はすぐさまフードを深く被って背を向けてしまった。 は少しだけ残念に思いながら彼の背中を見つめてた。 「…じゃあ……行ってくる…」 ポツリと零れた一言に山姥切の優しさを感じて、もまた「いってらっしゃい」と小さく返したのだった。 ────── 数日後。 彼らは本丸へと帰ってきた。 だが、傷付き、疲弊しきった彼らを見たは愕然とした。 とてもじゃないが少なくとも笑顔で迎えられる状況ではなかった。 ■戻る |